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2006.05.30 本日の更新
コトノハヒラリを更新してみました。
こういう詩の方がカタルシス作用が強い気がします。
すっげーすっきりする。笑
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どくがすもくもく


自分に向かって毒振りまいても

自分の毒じゃ自分は死ねない

かわりに毒に染めたのは

かけがえのない周りの彼等





あの子がきらい

なんだかよくわからないけど
なんでかよくわからないけど


みんなは好きなあの子のことを
きらいっていう気がしてた



あの子はみんなにやさしくて
あの子はみんなとなかよしで
あの子はなんでもよくできて
とってもいい子なあの子のことを



なんだかよくわからないけど
きらいっていう気がしてた



あの子はみんなにやさしくて
わたしなんかにもやさしくて
あの子はとってもすてきな子
誰が見たってすてきなのに



なんでかよくわからないけど
きらいっていう気がしてた



なんだかよくわからないけど
きらいっていう気がしてた
なんでかよくわからないけど
きらいっていう気がしてた




なんだか違う わかってる
なんでかほんとはわかってる





あの子になれないわたしのことが
きらいっていう気がしてた



2006.05.30 なみだ
       なみだ


     泣かないでっておこられた
     泣かせたのはそっちなのに
     泣かないでって責められた
     泣いてるわたしは悪い子だ


     「泣いててもしょうがないでしょ」
     「泣けばいいと思ってるの?」
     「泣かないでよ お願いだから」

     そのことばが よけいに



     …なみだ………なみだ…



     泣きたいわけじゃないのに
     泣いていたくなんかないのに



     そう思うと よけいに




     なみだ…なみだ…



     泣かないでよわたし
     泣いてちゃだめなんだよ
     泣いてたら悪い子だよ



     そう思っても よけいに




     なみだ なみだ なみだ



     泣きたくなんかないのに
     泣きたくなんかないのに
     泣きたくなんかないのに



     なみだ なみだ なみだ なみだ



     泣いていたらだめですか?
     泣いてるわたしはきらいですか?




     きらいになりますか?




     なみだなみだなみだなみだなみだ




     泣いていたらだめですか?
     泣いていたらだめですか?
     泣いてるわたしはきらいですか?
     きらいになりますか?


ほんとのわたし


学校からの帰り道
いつもと同じ帰り道


なかよしの子と帰ってたら
あんまり話したことがない
同じクラスの子に会った


いつもとは少し違う
その子も一緒の帰り道



「なんだ、おもしろいじゃん
 クラスでは暗い感じだけど
 ほんとは明るい子なんだね」



笑いながらその子は言った
たぶん、これはほめことば


へへへっ、てわたしは笑った
ちょっとうれしかったから
だけどなんだかつらかったから




ほんとのわたしってなんだろう?




クラスでの「暗い」わたし
あそぶときの「明るい」わたし



どっちかがほんとのわたし?
どっちかはうそのわたし?




どっちもわたしだよ
どっちもほんとのわたしなのに


2006.05.29 本日の更新
引き続き詩を更新しました。
コトノハユラリに4点。

ブログを立ち上げて3日目。
まだまださっぱり勝手がわかりません。苦笑。
2006.05.29 金魚と花火
  金魚と花火


   電話口のきみの声が
   消え入りそうに小さくて
   僕はよおく耳を澄ませた
   淋しいきみの一言一言
   ぜんぶ逃さずすくおうとして
   だけど零れてしまった言葉を
   きみに尋ねてみることが
   なぜか僕にはできなかった
   どうしてもそれができなかった



   ふいに大きな音がした
   ドンドンと続けざまに
   夜空に大きな花が咲いて
   きみの声が消えてしまった
   そうして零れてしまった言葉を
   きみに尋ねてみることが
   やはり僕にはできなかった
   淋しいきみを知っていた



   眼前には浴衣の少女が
   水の前にじっとしゃがんで
   漂う赤い魚たちの下に
   そおっと薄い紙を差し出す
   水から上げるその寸前で
   それは静かに破れてしまった
   少女は泣き出しそうな顔で
   「もういっかい」と呟いた
   僕にはそれが言えなかった
   どうしてもそれが言えなかった
   再び花火が続けて上がった
   夜空に花が大きく滲んだ


2006/02
2006.05.29
 


  三月の町に雪が降る
  真白い雪が降りしきる
  春待つ町は雪化粧
  はずむ心は雪の底



  三月の町に雪が降る
  冷たい雪が降りしきる
  春待つあたしをとじこめて
  ほてったあたしは雪の底



  三月の町に雪が降る
  いつしか雪は灰色で
  春待つ町を覆い尽くす
  雲の厚みは増すばかり




  三月の町に雪が降る
  春待つ町への光を閉ざす
  春待つあたしは雪の底
  固く凍って雪の底





  溶けないなら
  砕いて




  砕いて



2005/02
2006.05.29 FAIRY TALE
    FAIRY TALE

   僕はキミに出逢った
   何処までも続く美しい花園
   風もなく影もなく青空もなく
   何処へも届かない花園で


   僕はキミに出逢った
   何時までも続く永い時の狭間
   過去もなく未来もなく現在もなく
   何時へも届かない時の狭間で


   そしてキミはその中を
   星より輝く羽根はばたかせ
   活き活きと飛び回る
   美しい妖精だった


   僕は心を奪われて
   キミを僕のものにしたくて
   両手でそっと捕まえて
   籠の中へ閉じこめた


   僕とはまるで違うキミに
   僕は心を奪われて
   僕とはまるで違うキミを
   僕のものにしたくて


   だけど


   どれだけ想っても
   キミはキミだった
   僕のものにしたいのに
   キミはキミで僕じゃない


   僕とはまるで違うキミに
   僕は心を奪われて
   僕とはまるで違うキミに
   僕は苛立って


    キミを僕のものにしたくて
   つなぎとめていたくて


   キミの背中から
   星より輝くその羽根を
   そっと
   もぎ取った


   キミは飛べなくなった
   キミはキミでなくなった


   僕が心を奪われた
   活き活きと美しい妖精は
   もう何処にも居なかった

2006.05.29 NOW YOU'RE NOT HERE
       NOW YOU'RE NOT HERE

     今日も地球は廻り季節は巡り 風にも街にも夏の気配
     君の好きだったあの季節が 君なしで近づく


     この手もこの声も もう届かない 君がいない


     不機嫌そうにタバコをふかす俺に小言なんかぬかす
     君がいねえってのは誰もいねえってことだと気付いた
     わかりきってたことだった


     果たされない約束ならば 始めから交わしたくなかった
     叶わない望みならば いっそ持たなければよかった
     出逢わなければよかった


     この手もこの声も もう届かない 君がいない


     この目は君のいない世界を見続けなくちゃなんねえの?
     この耳は君の声を聞けず
     この腕で君を思いきり抱きしめることもできない


     儚い幸せの味なんて 始めから知りたくなかった
     消えてしまう居場所なんて 見いださなければよかった
     出逢わなければよかった


     みっともない愚痴も ぶつけられない 誰もいない
     ここに俺がいても 意味なんかない 君がいない
     この手もこの声も もう届かない 君がいない
     この手もこの声も 届かないなら いらないのに


     今日も地球は廻り季節は巡り 風にも街にも夏の気配
     君の好きだったあの季節が 君なしで


2002/03
2006.05.28 有言実行
コトノハフワリに詩を5点アップしました。
今見ると、やさしい詩を書いていたんだなあ。
そして今よりもわかりやすい。むむむ。
2006.05.28 Like A Blue Sky
Like A Blue Sky


思いっきりベル鳴らして 後ろから自転車が追い抜いてく
なんだよここは歩道なのに ちゃんと端っこ歩いてるのに



狭い通路いっぱいに 女の子たちが広がって歩く
大勢でのろのろ歩くなよ 私は速く歩きたいのに



自販機の前立ちはだかって 小銭を探しているおばさん
なんだよ先に用意しとけよ 私は用意できてるのに



エスカレーターの右側なのに 前の人が歩かない
なんだよそれなら左に乗れよ 右側は歩く人なのに



電車の椅子で幅とって 新聞読んでるハゲオヤジ
ほんとは7人掛けなんだよ つめてくれれば座れるのに




何気ない生活の中の よくある些細なストレス源
小さなイライラは苦いまま 頭の隅に居座り続ける




なんだか イライラ
心が トゲトゲ





広い広い道に出た
真っ青な空が広がっていた
そこに浮かぶ白い雲はのんびり悠々流れていく



ああ なんだ バカみたいだ



イヤなのなんてほんの一瞬 それもほんの些細なこと
それをいつまでも バカみたいだ




あの青い空みたいな大きな心を持てたらいいね

2006.05.28 I like you vvv
I like you vvv


       赤 青 黄色 白 黒 ピンク
       きみはどれが好き? 


       ピーマン 人参 トマト 玉ねぎ
       あなたはどれか嫌い? 



       人はそれぞれ 好みもそれぞれ
       好きも嫌いも人それぞれ



       みんなに好かれるものなんてない
       みんなに嫌われるものなんてない



       だから 大丈夫
       いいんだよ 大丈夫



       わたしはきみが大好きだよ



2002/冬ぐらい?
2006.05.28 BORDER
BORDER


友達の友達は友達、なんて言うけど
友達の敵や敵の友達が 自分の敵とは限らない



どうもウチらは分けたがる
勝手にグループ分けをして ひとくくりに考える
そんなの意味ないのにね



もっと細かく分けていけば
みんな誰もが違っていて
もっと大きく分けてみれば
人間という名の同じいきもの



境目なんてないんだよ 




2002/何月だっけ? 
とりあえずノーボーダーのCMより前ですよ、と主張しておく。

Dear My Friend ×××


待ち合わせの時間ぴったり 辺りを見てもあなたはいない
5分経ってもまだ来ない 10分経ってもまだ来ない


今まであなたと過ごしてて 嬉しかったことと嫌だったことと
どっちがどれだけ多かっただろう
待ちぼうけをくらいながら ふとそんなことを考えた


ええと 嬉しかったこと・・・
毎年誕生日には忘れないで祝ってくれたね
嫌だったことならいっぱいある
あのときはマジむかついた それにあんなことだって・・・



さっきから思い浮かぶのは 嫌だったときのことばっか
どっちが多いかなんて 火を見るより明らかじゃん?
・・・ってゆーかもう20分待ってんだけど 携帯にも出ないしさ



約束忘れちゃったのかな 待ってても来ないのかな
楽しみにしてたんだよ 話したいこともいっぱいあるのに




うちらどうして友達なんだろ




息切らしてあなたが来たのは 30分も待ってから
携帯家に忘れたの!? しかも反対口と間違えた!?
まったく・・・ 怒るの通り越して なんか笑えてきちゃったじゃん





ああ そうか
見落としてたのはすごく簡単なこと





あなたがいるのが嬉しいんだ


2002/07?(うろ覚え)
2006.05.28 トマト
トマト


少し気の早い陽気につられて 今日は歩いてみようかな
風はやわらか陽はぽかぽか どこまででも歩けそう



30分とちょっと歩いて ファーストフードのお店でおひる
今日は感謝デーですよって トマトの種とちっちゃな鉢
どうせ育てられないけど 愛想笑いで受け取った



こんな日は本当に 生きてるだけでいい気持ち
穏やかな昼下がり おなかいっぱいの帰り道
春が来てる もう春だよ



いつの間にかすぐ後ろを 女の子たちが歩いていて
卒業後のことやなんかを はしゃいだ声で話していて
その声から逃げるみたいに 急に早足になる自分



にごった空のはしっこが 現実を強く知らせていた
あまずっぱい春のにおいが 胸につかえて苦しくなった



春が来てる 新しい春が
季節はきっちりめぐっていて 心はいつも置いてきぼり
もう春だよ 新しい春だ
止まったままの自分を思うと 居ても立ってもいられなくなった




帰ったらあのトマトを植えよう かわいい実がつきますように



2002/03
2006.05.27 とりあえず
お試し版公開、みたいな感じで。
小説3作の第1話をそれぞれ載っけてみました。
暇潰しにでも読んでいただけると幸いです。

続きはおいおい載せていくとして。
次回は詩の方を更新する予定です。やっぱりまずはフワリからかな。
2006.05.27 フタオ。・1
  1・夏の少年


 「あー、ヒマだなもうっ!」
 思わず独り言をつぶやいて、オレはごろんと寝転がった。
 ヒマだ。とにかく、ヒマだ。
 寝転がったまま目だけ動かして今居る家の中を見渡してみた。
 広いなあ。天井も高い。ウチの平らな天井と違って、屋根を支える骨組みみたいなの(はり、とかいうやつ?)が見える。……あ、蜘蛛の巣張ってら。蜘蛛ならまだ許すとして、蜂の巣なんかあったりしないよな? やだよ蜂は。なんせ飛ぶし刺すし怖いじゃん。
 しっかしヒマだ。なんでこう「おばーちゃんち」とかって何にもないんだろ。テレビはあるけど今の時間じゃどうせつまんないし。……あー、プレステやりてー! せめてゲームボーイ持ってくりゃよかったよ。持ってきたマンガ2冊じゃこの退屈はしのげない。
 「外にでも出てみよっか」
 ちょっとつぶやいて、すぐ考え直した。八月。時刻は一時半。真夏の太陽絶好調、気温もウルトラハイな今、用もないのに1人で外になんか出てどうするんだよ。
 今頃テツたちは何してるだろ。クーラーきいた部屋でジュースなんか飲みつつ格ゲーとか対戦してたりしないよな。プールとか行ってねーよな!? オレは1人寂しくばーちゃんちでヒマしてるとゆーのに……。
 おととい、オレは1人でここ、ばーちゃんちへやって来た。別に好きで来た訳じゃない。ウチは両親とオレの3人家族なんだけど、楽しい夏休み、さーて家族でお出かけでもしましょーかってこの時期に、お父さんが入院してしまった。お母さんは病院でお父さんの世話をすることになった。で、オレは、田舎送り。
「大丈夫よね。翔也はもう6年生だもんね。ちゃんとおばあちゃんの言うこと聞くのよ」
 お母さんはちょっと心配そうに言った。そりゃ、たしかにオレはもう6年だし、お母さんが居ないと寂しいなんてガキじゃない。けど、なんでよりによってこのばーちゃんちなんだよ!?
 この家がいやなわけじゃない。ここへは初めて来たようなもんだけど(前に一度来たらしいけどちっちゃい頃だから覚えてない)、これはこれで「おもむき」があっていいと思うよ。狭いマンションに慣れたオレにはちょっと新鮮だし。問題はばーちゃんだ。お父さんの方のばーちゃんはにこにこ優しいのに、こっちのばーちゃんはやたら元気でしゃきしゃきしてて……ぶっちゃけ怖いんだよなー、なんか。よく居るじゃん、名字に「ババア」付けで呼ばれる小うるさい先生。あれに近い感じ。
 今日はばーちゃんはお昼食ってすぐ出かけちゃった。ほっとしたけど、こんな家に1人ってのもヒマでしょーがない。
 くっそー、こうなったら日本人の憧れ「縁側で一句」とかやっちゃうぞ!?
 そんな半ばヤケな気分で縁側に行ったら、夏の日差しと共にある人影が目に飛び込んできた。
 目深にかぶった麦わら帽子で顔はよく見えないが、たぶん年はオレと同じくらいで、男。なんで勝手に人んちの庭に居るんだ? このへんに住んでるヤツだろうか?
「よう、お前、見ない顔だな。名前何ていうんだ?」
 よく通るいい声でそいつが話しかけてきた。
「え、オレ? 中川翔也……」
「村のヤツじゃないだろ」
「え、うん……お前はこのへんに住んでんの?」
「ああ、ここはいいとこだぜ。オレは気に入ってる」
 そいつはすたすた歩いて近寄ってきた。蝉の声がでかいせいか、全く音を立てずに来た気がした。
「ねえ、遊びに行こうぜ。どーせヒマだろ?」
「ヒマだけど……今一応留守番してんだ」
「よくゆーよ、あんまりヒマだから外へ行こうとか思ってたんだろ」
 ……げ、図星。そんな言い方をされてオレはちょっとむかついた。
「泥棒に入られたらオレのせいになるだろ。ウチのばーちゃん怖ぇんだぞ」
「……大丈夫。泥棒なんか入れない」
 そいつはにやっと笑って言った。なに言ってんだこいつ、と思ったが、なぜだかその言葉には妙な説得力があった。
 結局オレは誘われるようにしてそいつについてった。そいつはオレの手首をつかんでどんどん歩いていく。その手は夏だというのに妙に冷たい。
 どんどん歩いて、ばーちゃんちに来るとき側を通った、深い森の所に来た。
「やっぱ森はいいよなー、涼しくて気持ちいいぞ」
 そいつは森の中に入っていった。オレはちょっと気が引けたけど、そいつが呼ぶから仕方なく入った。中は幹が太くて背も高い木が茂ってて、昼間なのに薄暗い。
 それから俺たちは森の中を歩き回って虫を探したりして遊んだ。そいつはどんどん森の奥まで入ってくから、オレは心配になって何回か「迷わないか」と聞いたけど、そのたびにそいつは自信たっぷりに笑って、
「ばーか、オレはこの森のことなら世界一わかってるんだぜ」
 と言った。
 あっという間に夕方になった。
 帰りに、そいつはばーちゃんちの前までオレを送ってくれた。
「じゃあな。明日も遊ぼうぜ」
「うん。そういえばオレ、まだお前の名前きいてない」
「ああ、オレ?」
 風が吹いた。麦わら帽が風に飛んで、顔がはっきり見えた。きれいな切れ長の目をしている。
 そいつは上手く帽子をキャッチして、また目深にかぶりながら、ちょっと笑って言った。
「オレはフタオ。またな」
    
  An Absurd Story・1


 あたしは犬が嫌いだ。
 なぜって、そもそも奴等があたしを嫌っているのだから仕方がない。奴等はただ公道を歩いているあたしに向かって柵の向こうから吠えまくり、公園で出くわせば追いかけ回し、スーパー前では柱にくくりつけられてる身でもなお「俺の間合いに入れば殺すぜ」とでも言わんばかりに威嚇してきやがる。こんな敵意丸出しの相手に好意なんか持てるかっつの。生憎あたしはクリスチャンではないので、敵を愛してやる義理なんかない。
 だから、あたしがソイツを拾ったのは、宝くじに当たるよりも雷に打たれるよりもグランドクロスが起こるよりも類い希な気まぐれだったのだと思う。




「……きみは、なんだってウチの真ん前なんかに倒れちゃったの。よりによって」
 おろし立てのバスタオルの上でぴちゃぴちゃ水を飲むソイツに話しかける。真っ黒な毛並みのソイツは、どこかとぼけた感じの顔をこっちに向けて、犬のクセしていっちょまえに会釈みたいなことをした。
 あたしとソイツとの出会いはほんの二時間前に訪れた。いつものように学校から帰ってきたあたしは、ウチの表札前にうずくまるソイツに気付いてしまったのだ。っていうかそんなもん気付かない方がおかしいんだけどさ。
 あたしは犬が嫌いだ。かといって、残念ながら自宅の真ん前で行き倒れてるソイツに放置プレイかませるほど薄情な人間ではなかったらしい。なんせソイツはボロ雑巾さながらによっれよれのくったくたで、動物を飼ったことのないあたしでも一目でわかるくらい弱っていたのだ。
 あたしはぐったりと動かないソイツを抱きかかえて家の中に運び込むと、まず風呂に入れて体を洗い、親戚にもらった高級タオル詰め合わせをおろして寝床をこさえ、水と食料(犬の食べ物なんてわかんないから冷蔵庫の中のハムやらチーズやら適当に)を与えた。そして現在に至るというわけですよ。
 ものすごい勢いで食物摂取してるところを見ると、どうやらそれほど深刻な状態ではないらしい。発見時はどうなることかと思ったけど、意外と元気そうで何よりだよ、うん。よかったよかった。
 で、問題は、これからコイツをどうするのかってこと。
 見た目にはわからないけど、もしかしたら何か病気とかどっか怪我とかしてるのかもしれない。一応獣医さんに見せた方がいいよね、きっと。
 あれっ。でも待って。獣医ってどこよ。この時間やってる? 予約とか要るの? てゆーかお金は? あたしが払うわけ? それは勘弁だよ、飼い主でもないのに!
 そうだ、飼い主。コイツ飼い主いるのかなあ。いたとしたら、ひょっとしてコイツ迷子ってやつ? あるいは捨てられたとか。あり得る。大いにあり得る。首輪してないし汚れまくってたし、どっかの家で飼われてるというふうには、ちょっと考えにくい。
「わんっ」
「わ、びっくりしたあ」
 それまでだんまりを決め込んでいた黒犬が初めて一声鳴いた。吠えたんじゃなくて鳴いた。深い真っ黒な瞳があたしをじっと見上げている。
 ああ、気付かなかったけどコイツ、なんだか優しい目をしてるな。優しくて、ちょっと淋しい感じの目。
 あたしはソイツの頭をそっと撫でてみた。何度も言うけどあたしは犬が嫌いだ。だからこれもほんの気まぐれだ。一時の気の迷いだ。
 ……ああ、短めの黒い毛が、柔らかくて気持ちいいな。撫でてやると黒犬も気持ちよさそうに目を細めた。
 そのまま毛並みの手触りを楽しんでいると、不意に指先にカツンと硬い感触があった。
「あれっ、なんだろ……」
 そーっと指でまさぐってみると、耳の付け根のあたりでやっぱりカツンと何かにぶつかった。見てみると、細いワイヤーみたいなものがぐるぐる巻かれて、黒犬の皮膚に食い込んでいる。
「うわ、何コレ、痛そっ」
 そういや、昔テレビで針金を足に巻き付けられた犬を見たことがある。何者かによる虐待だろうって言われてた。もっとずっと昔には矢ガモなんてのも話題になったっけ。ひょっとしてこれもそういうやつなんだろうか。
 あたしは犬が嫌いだ。でもコイツにたぶん罪はない。あたしはそーっと、黒犬を傷つけないようにワイヤーを外そうと試みた。
「ちょーっと、おとなしくしててよ。頼むよー」
 少しずつ少しずつ、巻かれていたワイヤーが外れていく。もうちょっと。もうちょっと。最後に表れたワイヤーの端をゆっくりと黒犬の耳から離す。
「よっし、外れた!」

 と、言うが早いか、突然、眩い光が部屋を包んだ。

 ちょっ、何? 何事!?
 一体何がどうなりました!?
 あ、だめだ、不意打ちで目がやられた。焼き付いちゃってマトモに見えやしない。
 光がおさまってもしばらくは視界がおかしかったが、徐々に徐々に、正常に見えるようになってきた。それと同時に、おかしな人影まで見えてきた。
 待て待て。ちょっと待ちなさいよ理保さん。
おかしいでしょ。やーばいよ、これは。マジに目がおかしくなっちゃったみたいだよ。
 しかし脳内ツッコミとは裏腹に、視界はどんどんハッキリしていく。いつも見慣れた我が家のリビング。そこに佇む長身の人影。ああ、幻にしては随分と鮮明だ。顔かたちまでハッキリ見えるや……。
 長めのラフな……というか伸びっぱボサボサの黒髪。アンニュイな……っていうかつまりやる気の感じられない目。スーツなんか着てはいるけど、随分な着崩し方をしていて、フォーマル感の欠片もない。しかもあごにはうっすら無精ヒゲ。
 その幻さんがこっちを振り向いた。わ、目が合ってしまった。すると幻さんは
「あ、ども」
 と、すっとぼけたご挨拶をしてくださった。
 …………待て。
 待て待てちょっと待て。
 だ か ら お か し い っ て ば 。
「きゃあああぁぁ!!?」
 このあたしが柄にもなくこんな女の子おきまりの悲鳴を上げてしまったのも、こんな状況ではまあ無理のない話だ。




「んー、待て待て。落ち着いて状況を分析しよう」
 どうやら幻ではないらしいその男は、混乱するあたしをよそに一人でブツブツ呟いている。
「落ち着いてられるかー! あんた誰!? どっから湧いて出たの!? てゆーか黒犬は!?」
「あ~ごめんねプリティガール。ちょーっと静かに考えさせて?」
 男はやる気のかけらも感じられない声でそう言い、でっかい手のひらであたしの頭を包むと、あろうことかそのまま、あたしの顔面を自分の胸板に押しつけやがった。
「むぷぅっ!?」
「んー……っと……、とりあえずどこだここ……? えーっとたしか俺……」
 幻であってほしかったその男は、あたしのことなど気にも留めない様子でブツブツと思考を続けなさった。
 ……発動せよ、怒りの乙女鉄拳!




 うふふいやだわ、あたしったら、夢でも見てるのかしら。
 あたしは行き倒れの犬を拾っただけ。あたし的にはそれでも十分非日常だけど、世の中全体ではこんなの、他愛ない日常の中のほんの些細なほのぼの物語だ。それだけのはずだ。
 それがまさか、こんな、非日常のトンデモ物語の始まりだったなんて。




「え~失礼……自己紹介が遅れました。俺の名はセンリ。助けてくれてありがとう。きみは恩人だスウィートガール」
 乙女の怒りを一身に受け半ばグロッキーになった男が、あくまで自発的に自己紹介を始めた。
「心優しいきみのおかげでなんとか元に戻れたよ。いやー助かった。とは言え突然の暴行で再びボロボロのセンリさん。きみ案外非常識?」
「どっちが非常識だよ!!」
 未だ怒りで頬を上気させながらもすかさずツッコミを入れるあたしを、センリと名乗る男はなぜかじーっと見つめてきた。な、何なのさ。
「ああ、さては早速俺にホレちゃった? これがきみの愛情表現かいシャイガール」
 …………。
 殺してえ……。
 しかしここで更にコイツをグロッキーにしてしまっては、いつまでたっても話が進まない。突っ込みたいけどここはスルーだ。ああ、あたしってなんて大人。
「……っていうか全っっ然意味わかんないんですけど。何がどーなってんのか説明してくれません?」
 あたしは大人的ナイス判断で話を進める。
「ん~……べつにいいけど、ぶっちゃけめんど……」
 パキッ☆
 満面の笑顔で拳を鳴らすあたし。
「説明させていただきます!」
 シャキッと態度を改めるセンリ。そうそう、始めからそうすりゃいいっつの。
「えーっとあれは…………いつだったかな。犬になってた期間が長すぎていまいちまだ記憶がはっきりしないな」
 うわあ。まさかとは思ったけど、やっぱりコイツがあの黒犬らしいですよ。なんだその古典パターン。どっかのアホな大学生が書く三流小説みたいじゃないの。
「まあ総合するとつまり……」
 センリはぼりぼり頭を掻いて経緯をまとめる。
「なんかよく覚えてないけどたぶんけっこう昔に、なんでかよくわかんないけど誰かに犬に変えられて、そのうえあの何ていったか名前はよく知らないけど魔力を封じる鉱物で無力化されていた・と」
 前言撤回、まとめてない。
「……曖昧箇所が多すぎない?」
「細事にこだわらないのが長生きのコツだ」
 ああそうけ。もういいよ。そういうことにしといたげるよ。ああ、あたしってなんて(略)。
「……じゃあ、今度は俺が質問していい?」
 センリがふっと真面目な声で言った。
「きみの名は?」
 さっきまで色気のかけらもないやり取りしてたのに、急に雰囲気変えて言うもんだから、あたしはふいをつかれてちょっとドギマギしてしまった。
「……日向 理保(ひむかい りほ)」
「りほか、可愛い名だね」
「べつにフツ……」
 言いかけて、声が出なくなった。センリの両手があたしの頬を包んだのだ。前髪が触れ合うくらいの距離で、大真面目にセンリは続ける。
「りほ、きみは犬になってた俺に唯一優しくしてくれた。そして俺を助けてくれた。だから今度は俺が、りほに恩返しをする番だ」
 頬が熱いのは、センリの手のひらの熱のせいだ。
 鼓動が速いのは、色々驚きすぎたからだ。
 センリの二つの黒い瞳に、あたしの姿が映っている。優しい目だ、と、そう思った。犬のときに感じたとおり、優しくて少し淋しい、深い瞳。
 センリはその目であたしの目を見て、そのやわらかな低い声で、とびきり甘いことばをくれた。
「りほのことは俺が守る。ずっときみを守り続ける」




 ああ、なんて乙女チックなストーリー展開。
 やっぱりこれはトンデモ物語だ。
 とにもかくにも、あたしとセンリの奇妙な日常はこうして幕を開けてしまったのであった。



  カタナガリ・1


 突然だが、諸賢は神とか仏というものの存在を信じるだろうか。
 今、草をかき分ける手間も惜しんで一心不乱に森を駈ける一人の若者は、そんなものは存在しないと常々思っている。もしそんなのが本当にいるとしたら、この世界にはびこる絶望はもう少し軽いものであっただろうし、俺にしたってもう少しましな生活を送っているはずだ、というのが彼の言い分である。
 しかし、そんな彼でも、今この瞬間ばかりは、神仏にすがりつきたい思いでいっぱいだった。
(ああ、神様仏様、俺は何かあなた方の気にさわることでもしましたか? いや、してないとは言わないけど……っていうかいっぱいしてますねごめんなさい! でもこんなのってないでしょちょっと。ねえ助けてくださいってマジで! ホントなんでもしますからっ!)
 などと、甚だしく礼儀を欠いた神頼みをしながら走っていたが、果たしてその祈りは届いていたのかどうか。地を這う木の根に足を取られて、若者は派手に転倒した。その拍子に、背負っている薬箱から摘んだばかりの薬草が飛び散ったが、それに構っている場合ではない。また、転ぶと同時に鋭い草に一太刀浴びせられたらしく、利き手である左の手の平に滲み出たばかりの赤い血が一筋の直線を描いていた。
「ドコヘイッタ……カクレテモムダダ……コゾォッ……!」
 奇妙に割れた低い声が若者の後を追ってくる。夕闇に包まれた世界が尚更若者の不安を煽る。
 背丈の高い草のおかげで、地べたに這いつくばった状態の若者の姿は、声の主には見えていないようである。若者は震えるのを必死でこらえて、じっと息を潜めている。
 だんだんだんだん近くなる、奇妙な声と呼吸音。
「ド……コダ……コゾォ…ッ!」
 生い茂る草の隙間からチラリと、声の主の灰色の脚が見えた。
(なんだってゆうんだよ、この化け物は!)
 化け物と形容されたこの声の主、一応は人に近い形をしているのだが、それでもその姿は人とはだいぶかけ離れている。極限まで開かれた目は急角度で吊り上がり、深い切れ目のような口は耳までパックリ裂けている。骨と皮だけの、ごつごつ尖った身体。長く垂れ下がった両腕は、肘から先が刺身包丁のような形状になっている。
(通り過ぎたみたいだな)
 若者はおそるおそる、草むらから頭が出るか出ないかというギリギリまで体を起こして、辺りを見渡した。
 化け物の姿はない。
 若者はほっと胸をなで下ろし、楽な体勢に座り直した。
「まったく……なんだってのよホントに……ツイてないよ、もう」
 ふぅーっと長い溜息をついて、空を仰いで恨み言をこぼしたその直後、若者は全身の血が一瞬にして凍り付くほどの恐怖を味わった。若者の目に信じがたい光景が飛び込んできたのである。
「マッタクダ……ツイテナイナ、コゾォッ!」
 先程若者がその根に足をとられた大木の枝に、通り過ぎたはずの化け物がぶら下がって、ニタニタ笑いながら若者を見下ろしているではないか。
 化け物はぶら下がったまま振り子のように揺れて、その反動を利用して飛びかかってきた。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!」
 若者は固く目を閉じて縮こまり、ひたすらに悲鳴を上げることしかできなかった。死を前にした人間の取り得る行動などそんなものかもしれない。
 だが、そのとき。
 キィン!
 目の前で、金属同士の激しい衝突音が響いた。
(え?)
 若者はおそるおそる目を開けた。目の前に見知らぬ黒髪の人物の背中がある。
「うわっ」
「邪魔だどいてろ」
 その人物が背中で言った。若い男の声である。
「ナンダ……キサマァッ!」
 先程の金属音は、化け物の両腕での一撃を黒髪の男が刀で受け止めたときのものだったようだ。両者は刃を交えたままの膠着状態にある。
「よう、包丁野郎。てめえを救ってやる」
 そう言って男は化け物の腕をはじくと、化け物の胴を一刀両断した。
「やった!」
「まだだ」
 二つに分かれた化け物の片割れ、腰から上の上半身だけが、刃を立てて黒髪の男に飛びかかった。黒髪の男はそれをするりと受け流し、化け物の両腕を切り落とすと、得物を失った化け物の喉を一突きにした。
 分断された化け物の身体はいずれも白く発光した後、粉々に砕け散り、塵一つ残すことなく、消えた。
「大丈夫か?」
 呆気にとられている若者の背後から、幼い少女の声がした。振り返ると、銀の髪に銀の瞳をした色の白い少女が、その大きな瞳で若者を見上げていた。まだ十にも満たない子どもに見えるが、たいへんな美少女である。右腕には風変わりな黒塗りの腕輪がつけられている。
「今頃来たのか。遅えぞ、ハズミ」
「『どうせ雑魚だから俺一人でいい』って言ったのはそっちだろ。おれがいなきゃ奴等の気配を感じられないくせに」
 どうやらハズミと呼ばれたその少女は黒髪の男の連れらしい。言い合いもどこか慣れた雰囲気だ。
「生憎俺は普通の人間なんでな」
「あー! なんだそれ、嫌味か! 差別か!」
「ああうるせえ……少し黙れ、頭痛がする」
 黒髪の男は冷めた声で言い合いを終わらせると、未だ呆けている状態の若者に声をかけた。
「おい、起きろ。大丈夫か」
 言われて若者は我に帰った。
「あっ、あ、ありがとうございましたっ!!」
 若者は大音量で謝意を述べるとともに、がばっと茶色い頭を下げた。
「俺もうホント死ぬかと思ったっスよマジで! 九死に一生ってこのことだ! 命拾いしたよ!」
「そいつはよかったな。行くぞハズミ」
 黒髪の男はしれっと一言返して、その場を立ち去ろうとした。若者がすかさずその腕をがっしり掴む。
「待ってよ、何かお礼を」
「いらん。離せ。俺に構うな」
 黒髪の男は心底うっとうしそうに言い放ち、構わず行こうとする。若者も負けじと縋り付くようにして引き留める。
「そんなこと言わずにっ! こっちは命救われてんスよ? お礼くらいさせてって」
「うるせえな離せ! べつに助けたくて助けたわけじゃねえ。妖刀をぶっ殺しに来たらたまたまてめえが襲われてただけの話だ」
「ようとう?」
「さっきの化け物のことだ。あれは刀の妖怪で、人を斬って吸った血のぶんだけ妖力を増す。だからてめえを助ける必要があった、それだけのことだ。わかったか! わかったら離れろ!」
 若者に抱きつかれているのが相当嫌らしい。先程までのクールさはどこへやら、がむしゃらなまでの拒絶っぷりである。が、若者に引き下がる気配は全くない。
「それでも命の恩人に変わりはないよ。晩飯くらいごちそうさせてって。俺の料理ってば絶品よ?」
「いらねえって言ってるだろ! おいハズミ、見物してねえでコイツをひっぺがせ!」
 言われて、傍観を決め込んでいたハズミは二人に近づいた。そして。
「お、おい、何のつもりだ」
 ハズミは黒髪の男の脚に後ろからしがみついた。
「意地張るなよトウジ。せっかくこう言ってんだから、ここはご好意に甘えるべきだと思うぞ」
「……ハズミてめえ裏切んのか」
「だっておれ腹へった」
 ハズミはけろっと答える。若者はにやりと笑った。
「ほら、こちらのお嬢さんもこう言ってることだし、遠慮しなさんなって」
「しなさんなって」
 復唱したのはハズミである。トウジと呼ばれた男は、くたびれた様子で深く溜息をついた。
「……わかったよ、てめえらの好きにすればいいさ。……わかったから離れろ」


オリジナル小説。2001年夏~冬に執筆。

資料ゼロで書いたので色々おかしいところがあると思いますが
目をつぶってやって下さい。

本編全8話+α
オリジナル小説。2005年8月執筆。
恋愛もの。

全6話。
オリジナル小説。2004年9月執筆。

本編全6話+α
ミッドナイト-ブルー 8 [midnight blue]

黒に近い紺色。

三省堂提供「大辞林 第二版」より



暗くて重くて痛くてしんどい文ばかり。詩あり小説あり。
短い短いお話のような詩。
一見ほのぼのしていても毒入り度が高めな詩。

比較的無毒な詩をおいています。
たまにほのぼのしてたり前向きだったりします。
2006.05.27 初。
ブログを始めてみました。
創作した小説や詩などをぽつぽつと載せていこうと思います。
のんびり気ままに更新予定。
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