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2006.06.29 本日の更新
かなり久々の更新。
ミッドナイトブルーに小説「ふたりぼっち」をアップしました。
もちろんフィクションではありますが、これを書いたことで自分自身がひきずっていたものにも少し区切りをつけられた気がしています。
滅入る話ですが、読んでいただけたら幸いです。
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2006.06.29 ふたりぼっち
ふたりぼっち

「あつぅ…」
 流れる汗とともに無意識にそんな言葉が漏れる。
 どこまでも伸びるアスファルトがまだまだ元気な九月の陽射しとタッグを組んで、素敵に無敵な酷暑を演出している。
でかくてごついデコトラがもわっとする黒いガスを残して私の右を追い越していった。
 そろそろ正午。学校は今頃四時間目。
 

 私の名前は白鳥美麗(しらとり みれい)。ビレイと書いてミレイと読む。一見ゴージャスお嬢様風な名前だけど、私自身はというと普通の中流家庭に生まれ育ったきわめて平凡な一女子中学生にすぎない。特にこれといって取り柄もないし、勉強も運動もいまいちで、胸なんか中二にもなるのにすとんと平らだ。もちろん顔も全然美麗なんかじゃなくて、自分で見ても気弱そうな大きなドングリ目のせいで、たびたび小学生に間違われる。
 まったく、なんてだいそれた名前をつけてくれたんだろう。こんな名前付けるなんて親も賭けだよ。しかも見事に大負けしてるし。
 まぁ、普段学校で下の名前を呼ばれることなんてまずないから、その分まだマシかなぁとも思う。先生も女子も男子もみんな私を「白鳥さん」と呼ぶ。中には私の下の名前を知らない人も多いんじゃないだろうか。普段関わりもしないクラスメイトのフルネームなんていちいち覚えてないだろうし。
 でも、クラスの中に、私のことを「白鳥さん」以外の呼び方で呼ぶ人が二人だけいる。
 私のことを「ミレー」と、下の名前で呼ぶ人は、親や親戚を除いてはたった一人だけ。
 そのたった一人が、親友のリエちゃんだ。
 リエちゃんとのつき合いは、今となってはかなり長い。小三の時のクラス替え以来、私とリエちゃんはずっと同じクラスなのだ。
 私たちはすぐに仲良くなった。体も大きくてしっかり者のリエちゃんは、ちっちゃくて気弱で泣き虫な私をいつも引っ張ってくれた。世話焼きで仕切り屋のリエちゃんは、他の子から鬱陶しがられることも多いけど、私はそんなリエちゃんがちっともイヤじゃなかった。そりゃ、ときどきはむかついたりケンカしたりもしたけれど。
 中学に上がったときも、リエちゃんと同じクラスになれたから私は全然不安はなかった。本当はリエちゃんと同じ部活に入りたかったけど、リエちゃんが入ったのはバレー部だったから、運動オンチな私は入部を諦めた。それでも、学校生活の中で一番長い教室での時間をいつもリエちゃんと一緒に過ごせたから、私は毎日とても楽しかったんだ。
 そして中二のクラス替え。ドキドキしながら掲示を見ると、私の名前とリエちゃんの名前が同じ名簿におさまっていた。
 新しい教室に入って、出席番号順に席に着くと、リエちゃんの席はずいぶん遠かった。学活が始まるまではみんな席を立ってガヤガヤしていて、私もリエちゃんと話そうと思ったんだけど、リエちゃんは同じバレー部の女の子達と数人で楽しそうにおしゃべりをしていた。私はなんとなくその輪に入りにくくて、自分の席でポツンとしてた。
 でも本当はあのとき、無理にでもあの輪に入っておくべきだったんだ。
 何気なく教室を見回すと、私の三つ後ろの席で、同じく一人でポツンとしている女の子を見つけた。私も一人で居心地が悪かったから、その子に話しかけてみることにしたんだ。
 その選択が正しかったのかどうかは、今の私にはもうわからない。
 

 私は彼女を知っていた。中一の時にはクラスが隣だったから保体が一緒だったし、委員会も同じで、表面的な会話なら何度か交わした。
 彼女の名前は鳳おおとり緋沙子ひさこ。私とタメをはるくらいのすごい名前だけど、彼女自身の印象は名前の印象とはだいぶ隔たっている。
 ぷっくりと大きなだんご鼻。同じくぷっくりした唇からは大きな前歯がはみ出している。小さな丸い目に大きな黒縁眼鏡。それらのパーツが浅黒く平べったい顔面に不格好に並んでいる。
 正直私も、初めて彼女を見たときは「うわっ」と思った。
 でもそんなのは彼女のほんのうわべで、彼女そのものは普通の優しい女の子だ。話してみればわかる。
 私はひさちゃんが好きだし、友達だと思ってる。外見なんか関係ないと思ってる。
 でも他の人たちはそうじゃない。
 ひさちゃんがいい子だってことは、関わってみればわかるんだけど、みんなは始めからひさちゃんに関わろうとすらしないんだ。
 私はそれが許せない。


 いい加減暑いし歩き疲れたしお腹も空いたし喉も渇いたので、通り沿いのコンビニに入ることにした。
 ひやりと冷たい空気に包まれて、生き返る思いがする。
 500ミリペットのお茶とおにぎり二つ、デザートにフルーツヨーグルトをつけてレジへ。
「ありがとうございましたー」
 歌うような店員の決まり文句を背中で聞いて、酷暑の世界に戻る。服が一瞬にしてあったまるような感覚。
 すぐさまお茶を開けて、思いっきり飲んだ。思いの外冷たくてキーンとなった。
 コンビニを出て二つ目の曲がり角の奥に、木陰がいい感じの公園を見つけた。お昼を食べるのにもってこいだ。
 誰もいない公園のベンチに座って、おもむろにおにぎりをほおばった。梅干しがすっぱくて一人で顔を歪める。
 ひさちゃんもきっと今頃、一人きりでお昼を食べているんだろう。その姿がリアルに思い浮かんで、申し訳ない気持ちになった。


 私とひさちゃんは、いつも二人一緒だった。
 いつも二人だった。
 私がいなければひさちゃんは一人。ひさちゃんがいなければ私は一人。
 私たち二人には誰も近づこうとしない。男子はもちろん、女子も、リエちゃんも。
 理由ならわかってる。
「だめじゃない二人で浮いてちゃ。もっと馴染んでいかなくちゃ」
 ある日の給食の時間、同じテーブルに着いていた担任が私たち二人に言った。
 六人掛けの席の半分は当然のように空いている。
「ねえ白鳥ちゃん?」
 吐き気がした。
 母の年とそう変わらないこの女教師は、まるで近所のお節介主婦じゃないか。
 ねっとりした口調も、しつこいくらいのえびす顔も、的はずれの助言もただ不快でしかない。
 馴染んでいかなくちゃ?
 何言ってんの?
 何を見てんの?
 このおばさんは何をどこまでわかっててそういう口をきくのだろう。
 私たちだって、始めから二人で食べていたわけじゃない。
 他の学校ではどうだか知らないけれど、うちの学校では給食があって、みんなで食堂へ移動してクラスごとに昼食をとることになっている。
 広い食堂はクラスごとにエリア分けされていて、生徒は自分のクラスに割り振られた席で食べる。教室での班ごとに着席するクラスもあるみたいだけど、うちのクラスは自由に好きな人同士でグループになって食べるんだ。
 クラスの女子グループの中に、四人で構成されているグループがある。
 一つのテーブルの定員は六人。椅子は二つ余る形になる。
 始めの何週かはそこに座って食べていた。席は限られているし、空いてる席に着くのはそう不自然なことじゃない。電車で空いてる座席に座るのと同じ感覚じゃないか。
 けれど彼女たちはそんなことすら快く思わないらしい。
 わかるんだ。よーく。
 私たちが席に着いた瞬間に、彼女たちは白々しい小声で「えっ」と言い合い、顔を見合わせ、笑う。
 そう。独特の、あの笑いだ。
 パンをちぎる動作も、牛乳を飲むときの目線も、スプーンを入れる口元も、全てがその白々しい目に晒されているようで、食事を味わうどころじゃなかった。
「なんか、ね」
 ある日、私たちが座った途端に彼女らの中の一人が冗談っぽく言った。
「仲良しグループ? みたいな」
 びくっ、と、体がこわばった。
 あははっ、と彼女たちは笑う。
「仲良し六人組?」
 席を立とうと思った。
 教室にでも行って一人で食べた方がマシだと本気で思った。
 居たたまれなくなってひさちゃんを見ると、ひさちゃんは素知らぬ顔でコッペパンを囓っている。
 やりきれなさがこみ上げて、胸の中で飽和状態になった。
 やりきれない。こんなの。やりきれないよ。
 それ以来、私はひさちゃんよりも先に、誰も座っていない余ったテーブルに着くようになった。
 仕方ないじゃないか。私たちの選択肢は二つしかないんだから。
 それをなぜ、私たちが悪いように言えるのだろう。
 こっちは不当な差別を受けてるだけじゃないか。
 やりきれない。やりきれない。やりきれない。

 やってられない。

 こんなことはお昼に限ったことじゃない。
 体育の自由練習も、いつも隅っこで二人でやった。何かグループ分けをするときにはいつも余って決まらなかった。
 一学期からずっと続いてきたこの特別待遇のおかげで、自分の置かれてる状況なんてものはイヤと言うほど思い知っていたつもりだったけど、どうやらそれでもまだ足りなかったらしい。
 二学期に入って、席替えが行われた。
 私はくじでひさちゃんの後ろの席になった。同じ班だ。
 うちのクラスの場合、一つの班は男女各三人の六人構成。
 私たちと同じ班になった男子は「うっわ死ぬ! マジ死ぬ!」とか「最悪!」とか叫んでいた。
 私たちと同じ班になったもう一人の女の子は、女子みんなから「かわいそー!」って言われてた。
 ああ、そうなんだ…と、思い知ったんだ、そのとき。
 以前給食の時間に先生にあんな言われ方をしたことも、妙に納得できる気がした。
 加害者なんだね、私たち。
 このクラスにとっては。
 このクラスでは、もう、そういう風になっているんだね。

 目が覚めるような気付きだった。
 絶望、だった。

 私が一体何をしたんだろう、って思ってた。
 私たちが一体いつ誰にどんな悪いことをしたの? って。
 でも違うんだ。そうじゃないんだ。
 悪いことをしたとかしなかったとか、してるとかしてないとか、そういう問題じゃないんだ。
 何をしてもしなくても関係ないんだ。
 どうしようもないんだ。


 みんなは私たちを嫌っているんだ。
 みんなは私を嫌っているんだ。


 それから数日経ったある日の放課後、トイレの前でリエちゃんに会った。
「なんか久しぶりな感じ」
 私に笑って話しかけたリエちゃんは、昔からずっと変わらない、私のリエちゃんだった。つられて私も笑った。
 すると、リエちゃんはふっと真顔に戻って、少し言いにくそうに話を切り出した。
「ブサコのことなんだけどさ…」
「ブサコって?」
 私は何のことかわかんなくて、きょとんとして聞き返した。
 ひさちゃんはクラスの中ではすっかり「ブサコ」で通っていたらしい。私はそれを知らなかった。
「だからね…緋沙子ちゃんとはもう一緒にいない方がいいよ。あんた今、あんたたち二人がどう見られてるかわかってる?」
 私は黙ってリエちゃんを見上げた。
「あたし、ナオっちとかにミレーはいい子だって言ってるから…。あたしの友達みんな、ブサコがいなければいいよって言ってるし、だからミレー…」
「ひさちゃんだっていい子だよ!」
 私はついムキになってかみついた。
「けどねぇっ…」
 リエちゃんも強い口調になった。
「あんた仲間はずれにされてんだよ!? 男子なんかみんな二人のこと嫌がってるし! 女子だって」
「わかってるよ!」
 リエちゃんの言葉を遮って怒鳴るように言った。両目からぼろぼろ涙がこぼれる。
「ごめんね、ミレー…。泣かないでよ…」
 リエちゃんは急にしょぼくれた声で言った。それが私には無性に腹立たしかった。
「いいよ、べつに…」
 捻れた心がふてくされた声を使って、とげ付きのセリフを吐き出していく。
「いいよ、あたし仲間はずれだって……べつに仲良くしてくれって頼んだわけじゃないし」
 こわばった顔でリエちゃんが見つめる。捻れに更に拍車がかかる。
「てゆーか、べつに仲良くしたくない!」
 語気を強めてとげとげしく言った。リエちゃんに、というより、自分自身に言った精一杯の強がりだったかもしれない。
 ばかみたい、と、思った。
 ばかみたい。
 矛盾してる。
 ひさちゃんはいい子だと言いながら、心のどっかで、ひさちゃんのせいで自分まで仲間はずれなんだと思ってしまっている。
 ひさちゃんを差別するみんながバカなんだと思いながら、自分もそうすれば仲間に入れてもらえると思ってしまっている。
 嫌われたくなんかないんだ、本当は。みんなに嫌われたくなんかない。
 特にリエちゃんには。
 リエちゃんにまで避けられている毎日は本当に辛い。リエちゃんも私のいないところでは、みんなと一緒になってひさちゃんと私の悪口を言っているんだろうか。
「私べつに、リエちゃんたちとも仲良くしなくていいよ!」
 泣きながら、これ以上ない精一杯の反抗をリエちゃんにぶつけた。
 リエちゃんはしばらく黙っていた。
「……じゃあいいよ」
 低く小さな声でそうつぶやくと、くるっときびすを返して、早足でリエちゃんは行ってしまった。廊下の曲がり角のところまでは歩いていたけど、曲がってからは走って行ってしまったのが足音でわかった。


 それからリエちゃんとは本当にダメになった。
 というより、私の方からつとめて距離を置いた。その分ひさちゃんとはべったりすぎるくらいに仲良くした。周囲のすべてに見せつけてやるみたいに、これ見よがしに。
 自分の中の何かが、ひどく捻れて渇いていくのがわかった。
 でもそれが何?
 仕方ないじゃないか。これは進化だ。私は強くなったんだ。
 むしろこっちがみんなを笑ってやる。
 離される前に離れてやる。
 仲良くなんてこっちから願い下げだ。
 嫌ってるのは、こっち。



 やることがないとお茶の減りが早い。
 お昼を食べ終わって、そのまま公園のベンチでぼーっと色々思い返しているうちに、あっという間にペットボトルは空になった。
 年々残暑が長くなってるように思えるけど、流石に九月後半ともなれば、日陰に座っていると風が幾分涼しい気がする。冷たいお茶をがぶがぶ飲んだからってだけかもしれないけど。
 さっきから隣の木でツクツクホウシが鳴いている。でも目を凝らしても姿は見えない。

 ベンチの背にもたれて空を見上げた。
 溜息がこぼれた。
 真っ青な空が悲しかった。
 涙は出ない。

 泣かなくなったのは、強くなったから。
 私は強くなったから、逆にみんなを嫌って、傷つけ返して、それで平然としていられる。そういう風になれたんだ。
 …そんな風に思うようにしてた。
 してた、けど。
 おかしいね。
 ばかみたいだ。
 やっぱり矛盾してるんだ。
 強くなったはずなのに。
 嫌われようと避けられようと笑われようと、もう何も感じなくなったはずなのに。

 何でこんなに息苦しいんだろう。

 どうしても今朝は校門をくぐれなかった。走って通り過ぎて角を曲がって、とりあえずどこかうちの生徒と鉢合わせない所に行かなきゃと思った。
駅に向かえばそれほど不審に見えないだろうと、それだけの考えで駅に向かって、一番安い切符を買って意味もなく電車に乗って時間を潰した。色々乗り換えたりしながら、乗った駅の隣駅で下車して、元の駅へと続く国道を歩き出した。
 そして、今に至っている。
ああ、なんて無意味で間抜けなエスケープなんだろう。
 今日休むって連絡入れてないから、きっと家に担任からの電話がいったはずだ。
 私、ケータイなんて持ってなくて本当に良かった。
 でも、これからどうしよう。
 今更学校になんか行けないし、今日はもう家に帰るしかない。お母さんに何て言えばいいんだろう。
 明日学校に行ったら、きっと先生に色々訊かれる。もしかしたら今日の夜にでも電話がかかってくるかもしれない。
 そしたら何て言えばいいんだろう。

 面倒くさい。
 何かもう、学校のこととか、考えるの面倒くさい。
 こんな余計なこと考えなくちゃいけなくなったのは、こんな風にサボったりなんかしちゃったからなんだけど…。
 でも、またあの教室で、あの白々しい視線の中で、毎日を過ごすのはもっときつい。
 限界、かもしれない。
 わかってる。私はそんなには強くないんだ。


 ごめん、ひさちゃん。
 もう無理なんだ。
 私はもう無理。もうやれない。
 やっていけないよ。



「みーちゃん?」
 不意に、聞き慣れた呼び声が背中に投げかけられた。
 私は驚いて振り向いた。慌てて後ろを向いたから首がぐきってした。
 振り向いたそこには、ひさちゃんがいた。
「えっ、ひさちゃん、なんで?」
「えっ? 今帰りだよ。うちこの辺なんだ。今日、県の教育研究会? とかいうので四時間だから、もう終わり」
 …ああ、そういえばそんなこと言ってたかも、昨日。ってことはまずいよ、他の人ももう帰りってことじゃん。早く帰らないと鉢合わせるかもしれない。
「…みーちゃんは?」
 ひさちゃんは遠慮がちに尋ねた。
「今日は、病院に行ったりとか?」
 ひさちゃんは何も疑わない顔でそんなことを言う。答えられずに黙っていると、ひさちゃんは気を遣うみたいに笑って、カバンから数枚のプリントを取り出した。
「これ、今日配られたやつ。保護者会の出欠もあるから必ず親に見せてって。あとね、数学の章末問題、来週までの宿題だって」
 そう言いながらひさちゃんは私にプリントを手渡した。
「あっ、ありがとう」
「あとで電話して言おうと思ってたから、ちょうどよかった」
 いつもの顔でにこっと笑ってひさちゃんが言う。
「じゃあ、また明日ね」
「うん」
 私もつられて、笑って返した。
「また明日」
 ひさちゃんは私に小さく手を振ってから、くるっと向きを変えて歩き出した。私はその背中を見ながら、ふっと自嘲的な笑みを漏らした。
 また明日、か。
 言っちゃったし、言われちゃったよ。また明日って。
 小さく溜息をついて、手渡されたプリントに目を通す。
 その中に、間違って今月の献立表が紛れていた。たぶんひさちゃんのだ。
あーあ、今日ってかきあげうどんだったんだ。けっこう好きなんだよな、あれ。…おっ、明日はゴマドレッシングのサラダにグラタン、しかもデザートにはプリンが出る。
 …なーんてことを考えちゃってる自分に気付いて、シリアスモードから一転、なんだか可笑しくなってきた。


 どーです、白鳥美麗。
 まだもうちょっとやれそうじゃない?
 やれるよ。
 やっていける。
 やってやろうじゃないですか。
 だって一人じゃない。
 ひとりぼっちじゃないんだから。


 やっていってやりましょう。
 ふたりぼっちで。


2005/03
2006.06.12 本日の更新

An Absurd Storyの2話目をアップしました。
絶好調で少女漫画。
でも大丈夫、本当に恥ずかしいのはこれからです。(何が大丈夫)


新しい恋をしてぇなあ・・・(遠い目)
  An Absurd Story・2


「いーい、今日はセンリの物を買うんだからね。荷物はヨロシクっ」
「御意……」
 センリがウチに来てから初めての週末、あたしたちは市内の繁華街に来ていた。
急に人一人やって来られたって生活用品が足りないわけで。男物の服は、父の遺品が少し残ってはいるけど、絶対サイズ合わないだろうし。
 こうして並んで街を歩いていると、センリの背の高さを改めて実感する。それになんとなく、道行く人の視線を感じるような。うーむ、そうなんだよなあ、スタイルいいし顔だって作りはいいんだよ。ただ惜しむらくは、どうもこの人はこう、しまりがないっつーかだらしがないっつーか……(出かけるにあたって無精ヒゲだけは剃らせてきたけどさ)。もっとシャキッとしてりゃそこそこイケてると思うんだけどな。もったいない。
 あたしたちは一緒にショッピングモールを見て回った。ときどき必要物資の調達という使命を忘れて、くだらない商品を見て笑ったり、派手派手な服を試着して笑ったり、キラキラのお花の髪留めを無理矢理センリの前髪にくっつけて笑ったりした。とにかく笑い通しだった。
「なんかのど渇かない? ちょっと寄ってこーよ」
 帰り際にコーヒーショップの前を通りかかったとき、カフェオレ好きのあたしが提案した。しかしお店に入ってみると、休日のせいか若者で混み合っていて、席は一つも空いていない。
「座れないねー。あたし行って買ってくるから、センリはあの辺で待ってて」
 あたしは店の裏側の人のいない通路を指定して、レジに向かった。表の通りだと人が多くて疲れるし、何よりセンリのことだから、オネーサン方に逆ナンされてもあのふざけたノリで意気投合しかねない。そんなことを想像したら、なんか知らないけど少しむかついた。
 二人分のコーヒーを持ってセンリに合流しようと歩いていると、右斜め前方でだべってた男が急に、勢い良くあたしにぶつかってきた。
「わっ」
「……あ?」
 ぶつかった男がアルティメット級の感じ悪さで振り向いた。
 げっ。あからさまにガラ悪いよコイツ。ドレッドだし眉毛薄いし鼻ピだしアゴヒゲだし。しかも自分からぶつかっといてキレ気味ですか。
「うわ、何? ねえ。汚れたんだけど、ねえ? あーほらシミになったよ、どーすんの?」
 げげっ。見た目のイメージ通り、早速からんできやがりましたよ。
「ねえ聞いてんの? どこ見て歩いてるわけ?」
「スイマセーン。大丈夫ですかあ?」
 そっちが前見てなかったんじゃん! という心のツッコミを抑えて、とりあえず精一杯の笑顔で応対してみる。お、穏便に行きましょうぜおにーさん……! 頼むよホント。
 しかしそんなあたしの想いもむなしく、ドレッド眉なしアゴヒゲ鼻ピ男はしつこくあたしにからみ続ける。
「は? 大丈夫なわけないんだけど。ほんとどーしてくれんのねえ?」
「どっ、どうするって言われても……」
 と、冷や汗ダラダラで見上げるあたしを、ドレ(略)鼻ピ男は急に黙って、じーっと品定めでもするみたいに見てから、にやっと下品な笑みを浮かべた。
「……いーよ? 許してやっても。ただし」
 鼻ピ男の腕がぐいっとあたしの肩を引き寄せた。
「タダで許してもらえるとは思ってないっしょ」
 かあっ、と、血が上っていく感覚がした。
「ちょっ……、はなしてよ、はなせ!」
「はなしてよぉ~はなせっ」
 鼻ピ男の仲間がふざけてあたしの言葉をまねた。ひゃはははっと笑う仲間たち。くっそーむかつく! こいつらバカにしてる……!
「はなしってってば! 人呼びますよ!?」
 あたしもいい加減頭に来て強い口調で言った。途端に、ニヤニヤしていた鼻ピ男から笑みが消えた。
「うるせーよクソガキ。殴んぞ?」
 鼻ピ男の殺気立った目に、思わず足がすくんだ。
 どうしよう。怖い。
 鼻ピ男はあたしが怯えたのを見て、満足したようにまたニヤニヤ笑いだした。
「おとなしくつき合えって。したら乱暴なことはしねーよ。お前だってボコられるよりゃヤられる方がずっといーだろ? 仲良くや」
「何アホぬかしてんだボケ」
 鼻ピ男の言葉を遮って、聞き覚えのある低い声がした。と同時に、ゴンッという鈍い音を立てて、鼻ピ男のドレッド頭にローファーのかかとが直撃した。
その場に倒れる鼻ピ男。どよめく仲間たち。その中心にそしらぬ顔して立っている長身の男。
「センリ!」
 そう、センリだ。どこからどうやっていつの間に来たのかわかんないけど、まぎれもなくセンリだ。
 センリはいつも通りにへらっと笑ってあたしに言った。
「いやー、来るのが遅れてゴメン、りほ。まーこのセンリさんが来たからにゃー大安心」
 いやっセンリ、後ろ後ろ!
「だ」
 言うのと同時に、仲間Aのパンチがセンリの頬にヒットした。
 えええ――― !? おいおいおい!
「なんだね若人ら! 喋ってる間に殴るとは卑きょ」
 センリは拗ねた子どものように反論した。その間に仲間Bの攻撃もヒット。おいおいおいおい!
こ、コイツを頼っていいんだろうか、あたし……。
「なんだコイツ弱ぇし!」
 鼻ピの愉快な仲間たちは調子に乗って一斉にセンリに襲いかかった。
 あああ危ない! あぶないセンリ!!
「逃げてセンリ!!」
 あたしは力の限りに叫んだ。と、次の瞬間。
「御意」
 耳元でセンリの声がして、ふわっと体が宙に浮いた。
「アレ!? ちょっ、アイツどこ行きやがった!?」
 鼻ピの仲間たちが動揺してキョロキョロしているのが眼下に見える。…あれ? 眼下? えっと、ここは?
「おかしいな、どこにも……ってうおっ!? いつの間に!?」
 仲間Cが後ろを振り返って、あたしたちに気付いたようだ。
 そしてあたしも気付いた。どうやらあたしはセンリに抱きかかえられて、センリともども塀の上にいるらしい。
「まあ気にするな」
 そんなすっとぼけた返事をして、しゃがんでいたセンリが立ち上がった。わわっ、視界が更に高くなった。
「……いいかいジャリンコ諸君。俺はべつに正義の味方じゃないしお前らの人生もどーだっていいから、お仕置きもお説教もしない。ただし」
 センリはそこで一旦言葉を区切ってから、重々しく続きを言った。
「俺の大事なりほに傷でもつけようもんならお前ら、二度とおうちに帰れないと思え?」
 鼻ピ仲間たちの顔色が一瞬にして青ざめた。彼らは誰からともなく後ずさって、一目散に逃げ出していった。
 っていうか……っていうか……「俺の大事な」!?
「大丈夫? りほ」
 呆けてるあたしを覗き込んでセンリが言った。
「だっ、だだ、大丈夫! 全然! バッチリ!」
「そりゃあよかった」
 センリはにこっと笑った。なんだろう、胸が苦しくなった。


 ああ本当に、なんてトンデモ物語。
 まるで出来過ぎたおとぎ話だ。
 でも、あたしはどうやらこの物語に、完全にハマってしまったようだ。





2006.06.05 本日の更新
「その他短篇」に1つ。
サークルで発行した恋愛もの限定号に載っけたものです。
桃色でない片想い。
あなたが幸せであるように


「上村栞、か」


 アイスティーに浸かったレモンをストローでつつきながら、あたしは幼なじみの直に向かって呟いた。
「イイ名前だね、案外。ま、今の方が言いやすいっちゃ言いやすいけど」
 テーブルを挟んで向かいの席に座っている、幼なじみで明日義理の兄になるその男は、あたしの言葉に「ははっ」という軽い笑いで返した。
「しっかし、アンタも幸せもんだよ、ほんと。あんな優しくてキレイでおまけに家庭的な奥さんもらえるなんてさ。おねえみたいなイイ女、全国探したってそうそういないよ。双子のあたしが言うんだから間違いない」
「そうだな」
 照れもせずに直が同意した。
 ハ、ノロケおってからに―と憎まれ口を叩くあたしに、丸めたストローの袋をぶつけて、直は涼しい顔でアイスコーヒーを堪能する。
 ファミレスのフロアの真ん中に陣取っている手前、掴みかかるわけにもいかず、ジロリと睨みをきかせるだけで済ませてやって、あたしもアイスティーをごくごく飲んだ。



 明日、あたしの双子の姉がお嫁に行く。
 姉は妹のあたしと違って、優しくておしとやかで、ちょっぴり頼りない感じで、体もあまり頑丈でなくて、いつも誰かが支えてあげているような人だ。
 一方、明日姉と式を挙げる2コ上のこの男は、でっかくて運動もできて兄貴風吹かしてて、みんなに頼りにされるような男だった。
 直とまともに張り合える女子は誰もいなかった。あたしの他には誰も。直が公園の木のてっぺんにまで登れば、あたしは更に高い木に登ってやった。直が運動会で選抜リレーのアンカーになったと聞けば、あたしもそれまでやる気のなかったリレーの選手に立候補して、全力ダッシュでアンカーをもぎ取った。
 直とまともに張り合えるのはあたしだけで、直が互角と認めている女子もあたしだけだった。そしてそれが、あたしの何よりの誇りだった。



「ねえ、直」
 ゆっくりゆっくり、角のとれていく氷をかき混ぜながら、あたしはどうしても訊きたかった質問を直にぶつけた。
「たとえアンタがどうなっても、どんなに自分が不幸になろうとも、おねえを幸せにするって誓えるか?」
「はい?」
 直は予想だにしていなかったように聞き返した。
「『はい?』じゃないよ。アンタはあたしのおねえをかっさらっていくんだ。生まれたときからいつも一緒だった、あたしの大好きなおねえをだ。それぐらいのこと言わせないと、あたしの気が済まない」
 そこまで言って、あたしはアイスティーのグラスをゴトンと置いた。
「おねえの為に自分の人生捧げるって、今ここであたしに誓え!」
 直はずっと真剣な目であたしを見ていた。が、あたしが言い終わると直後に、ふうっと溜息をついて言った。
「あほ。んなもん誓えるか」
「なっ…」
「当然だろが。俺は俺であいつはあいつだろ。あいつの人生はあいつのもんだし、俺の人生は俺のもんだ。俺は幸せになりたい」
 直はあたしの視線から逃げもせずに、いっそふてぶてしいくらいの顔で言い放った。


 バカな。何を言ってるんだコイツ。
 『あほ』だと? 
 誓えないだと?
 ふざけるな。そんなんであたしが納得できると思ってるのか。ふざけるなふざけるな。


「あほはどっちだ、ふざけんな!」
 思わず口に出てしまった。直のヤロウはというと、そんなあたしをキョトンとした目で見ていやがる。
「何怒ってんだよお前は…」
「バカヤロウ! 怒るに決まってんだろ! 見損なったよ直! それでもおねえのダンナになる男か!」


 なんだコレ。やばい。
 怒っているのに、涙が出そうだ。
 直のバカヤロウ。アンタはあたしに誓う義務がある。
 おねえのために。
 あたしのために。
 アンタは誰よりも何よりもおねえを愛していると、幸せにすると、あたしに誓う義務があるんだ。


「バカあほボケナス直の大バカヤロウ! 結局アンタはなんにもわかっちゃいないんだ! あたしがどんなにアンタとおねえの幸せを願ってるか……どんなに……っ」


 どんなに胸が痛んでいるか。
 どんな気持ちで今あたしがここにいるか。
 アンタは何も、何一つわかっちゃいない。


「ばかやろ……っ」
 涙でかすんで前が見えなくなった。
 頭の芯がじーんとする。
 ああくそ、みっともない。止まらない。
 泣くつもりなんてなかったのに。



「光」  



 直があたしの名を呼んだ。骨張ったでっかい手が、あたしの頭をぽんぽんとした。ひどく懐かしいその仕草にあたしの涙腺が更に緩んだ。
「あのな、光、お前なんか勘違いしてるぞ」
 泣いてる子どもにそうするようにやさしく頭を撫でながら、直はあたしに語りだした。
「俺は幸せになりたい。だから俺は、自分の人生をなげうって不幸になってまで、栞を幸せにするだなんて誓えない」
「それの何が違うんだよっ……やっぱりアンタはそうなんじゃないか」
「違うんだよ、前提が」
 きっぱりとした口調で直は言った。見上げたあたしの目に溢れる涙を指で拭って、直は続ける。
「俺が幸せでいるためには、栞が俺の隣で笑って、誰よりも幸せでいることが絶対条件だと思うんだ」
 そう語る直の目には、一寸の曇りもない。
「絶対幸せになってやるから、心配すんな」
 きっぱりと言い切って、直はあたしに向かってとびきりの顔で笑った。あたしが今まで見てきた直のどんな笑顔より、一番カッコイイ笑顔だった。



「……よし、アンタを信じてやるよ」
 そう言って、あたしも笑った。
 こぼれそうな涙はがんばってこらえた。




 ありがとう、直。
 これであたしは大丈夫。
 少しだけ胸は痛むけど、それでもあたしは笑っていられる。
 アンタとおねえの幸せを、やっと心から願えるよ。




「幸せになれよ、直」



2005/9/30
2006.06.03 本日の更新
ミッドナイトブルーを更新しました。
小説1つ、詩が4つです。

いやー、我ながら痛い。
大嫌い (白版)


やさしくしてくれるの?
話しかけてくれるの?
ひとりとひとりのときは
普通に接してくれるけど


みんながいたらわたしを笑う?
やっぱりみんなでのけ者にする?


その笑顔は本物?
ほんとに楽しい?
ひとりとひとりのときは
わたしに関わってくれるけど



「みんな」には入れてくれませんか?
「みんな」とわたしは違いますか?
「ひとり」でいなきゃだめですか?
「ひとり」はほんとはさびしいよ



わたしがみんなを嫌いじゃなくても
みんなはわたしを嫌いですか?



つらいよ
つらいよ
つらいよ
つらいよ




相手の笑顔が消えないうちに
自分から背を向けてしまった
わたしが自分でこじあけた距離が
わたしをますます追いやっていく

大嫌い (黒版)


やさしくしないで
話しかけないで
今はひとりだからって
普通に接しないで


みんながいたら笑うくせに
みんなでのけ者にするくせに


にこにこしないで
楽しげにしないで
今はひとりだからって
わたしに関わらないで


「みんな」にはなれないんなら
「みんな」なんてごめんだ
「ひとり」にさせたいんでしょう?
「ひとり」にしてよ 徹底的に



嫌いなのはこっちだ
わたしがみんなを嫌いなんだ



大嫌い
大嫌い
大嫌い
大嫌い




相手の笑顔が消えないうちに
自分から背を向けてやった
こじあけた距離は風を生み
胸を吹き抜け渇かしていった


2006.06.03 ヒトリ
ヒトリ


もどってきて。
そばにいて。


こんなに近くにいるあなたに
何度も何度も呼びかける
ふすま1枚隔てた部屋で
しずかに寝息をたてるあなた
  



うす暗い部屋
冷えた布団
遠くに聞こえるバイクの音






重苦しい夜の中
ひとりぼっち








こわいよ。









もどってきて。
そばにいて。






わたしもつれてって。











永い永い
夜という牢獄





いや、あの、不眠だったんです。
2006.06.03 Give me a POWER
        Give me a POWER


       ひとり部屋の中で 汚れた壁を見てる
       時を刻む秒針が やけに不安をあおる
       妙に片づいた机が どうも落ち着かない
       散らかった足もとが イラついてしょうがない
       「幸せってもっとたやすく感じられるものじゃなかった?」


       晴れた空を見ても溜息ばかり出てる
       風の音も花の色も私には悲しい
       心の羽根広げ四角い窓から飛び立つ
       私に見える景色は誰にもわからない


       心が冷えていく 声も失ってく
       目に映るすべてが 輝きなくしてく
       誰も居ないし何もない 真っ白な空間に
       君の写真を飾る 気力さえも起きない
       やけに疲れてて のども渇くよね
       「どこへ行けば何をすればもう一度自分になれる?」


       晴れてても曇っていても雨や風の日でも
       いつでも深い深い深い霧が出てるみたい
       何も見えない聞こえない 「どうでもいい」
       なのになんでこんなに苦しいんだろ


       いつからだろう 笑い方も忘れてしまって
       どうしてだろう 涙も出ない
       わかってる? 君にしかできないんだから
       「私に力を与えてよ…」


       晴れた空を見ても溜息ばかり出るけれど
       風も花もみんな今の私には悲しい だけど
       もしここに…君が居たら 君が側に居てくれたら
       もう一度 ねえ きっと 笑える気がするよ



歌詞っぽく書いてみたんです、よ。
どうでもいいけどホントうつうつだな高校時代(笑)
   がんばりましょう。


 夕食をすませると、すぐに部屋に戻って、ベッドに体を投げ出した。
 今日はいつものテレビがやってるはずだが、なんだか見るのもめんどくさい。というか、もう生活自体めんどくさい。朝早く起きて学校に行って、退屈な授業を受けて疲れて帰宅する…なんていうくだらない日常には、もう疲れてしまった。だからといって打ち込める部活もないし、バイトだって、こんなトロくて愛想もない私に出来るもんなのだろうか。
 青春と言えば恋、なんてよく言われるが、それも私には無縁のことだ。当然彼氏は居ないし好きな人も居ない。近頃はバラエティを見てても、女の子が屋上から告白とか見ず知らずの男女がシナリオ通りに恋愛とかそんな企画が目に付くが、よくやるなぁと思う。世間の人々はそういうのを見て面白いのだろうか。私にはいまいち理解しがたい。恋愛なんてそんなかったるいこと、進んでする気など全く起きない。
 なんて、そうでなくても私みたいなヤツを好いてくれる人なんていやしないだろう。私は私が嫌いだ。周りの人も私が嫌いなはずだ。こんなことは改めて言葉にしなくても常日頃から思っていることなのだが、こんなふうに夜自室でひとり、星なんか見上げてると、どうしようもなく身にしみて感じられるのだ。
 そして、いろいろなことが頭に浮かんでくる。元中の友達のこと、明日の幅跳びのテストのこと、今日の数学の宿題のこと、私を見て笑うクラスの女子グループのこと、進路のこと……。一通り考えてみて、やっぱりめんどくさくなって、またぼーっと夜空を見上げた。
 秋の空に星が輝き、虫の声が響いている。窓から入る夜風はもう冷たい。なぜだか私は急に、寂しいようなせつないような気分になった。
 あの日はもっとたくさんの星が見えた。中学の林間学校のキャンプファイヤーのときだった。たしかあのときは具合が悪くて、今みたいにひとりで星を見てたっけ。明るく燃えるキャンプファイヤーを取り囲む踊りの輪からひとり外れて。はじめからフォークダンスなんかやる気しなかったけど、本当に踊らないとは思わなかった。炎に照らされたみんなの顔がすごく楽しそうで、でもなぜだか遠くに感じて、たまらなくなって空を見上げた。そして、息をのんだ。
 見上げた夜空には見たこともないような無数の星が一面に輝いていた。それまで感じたことがなかったが、「吸い込まれそうな」という表現がまさにぴったりだと思った。そして、急に心細くなったのを覚えている。自分の存在が、限りなく小さく、そして疎外されたもののように感じたからだ。けれど、あの頃はまだ居場所があった。クラスのみんなにのけ者にされ、影で笑われても、心を許せる友達と、空間があった。けど、今は…。
 しょーがないかな、と思う。私には人よりいいところなんて何もない。勉強も運動もいまいち、顔もパッとしないし体型だって悪い。これでも性格がよければいいのだろうが、自分で言うのも何だけどあまりいい方とは思えない。自分で考えてもこんなヤツなのだから、他人の目にはもっとはっきりひどく映るのだろう。
 …なんだかさらにやるせなくなってきた。私なんか生きてて何か意味があるのだろうか? いっそ死んで臓器提供でもしたほうがよっぽど世の中のためだろう。そんなもんだ。この広い宇宙の中では私なんて居ても居なくても変わらない。死んだら…私の体は地球の一部となる。じゃあ精神は? ぷっつりととぎれて、それで終わってしまうのだろうか。霊とか死後の世界とかが実在するとは思えないが、それではあまりに味気ないではないか。
 …なんて考えてるうちに、私は眠ってしまっていた。もちろん宿題なんかしていない。数学の時間当てられて、やってないと言ったらやっぱり怒られた。
 あーあ、まったく、自分でも呆れてしまう。本当にどうしようもない。
 けど、まあ仕方ないかな、と思った。結局いくら嫌ってみても責めてみても、自分は自分なのだ。今までも、そしてこれからも。
 


 しゃーない、もう少し、がんばってみるか。
                        




今は昔10代半ばの頃に書いたものです。
未●年の主張やら未来●記やら古いネタが出てくるのはそのためです(苦笑)
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