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2008.07.26 フタオ・2
   2・オバケ森


 それから毎日オレはフタオと遊んだ。毎日外で遊んで汗まみれで帰ってくるなんて、こっちに来てなかったら絶対ないことだろう。
 ある日、いつものように汗だくで帰ったオレが玄関を入ると、中で知らないおじさんがばーちゃんと話してた。
「おや翔也おかえり。今日もどろどろだねぇ」
 ばーちゃんはオレを見て呆れたように笑って言った。
「おばちゃんのお孫さん?」
 そのおじさんはこっちをじろじろ見た。
「ぼうず、何年生?」
「え、6年」
「ほー。やっぱあれだな。男の子は小学生までがかわいいよなぁ。もっとでかくなっちゃ生意気でかなわん」
 そう言いながらオレの頭をぐしゃぐしゃした。なんだよ、ガキ扱いして。
「今な、ぼうず、スイカ持ってきてやったんだ。ありがたく食えよ」
 スイカ! イエー!! 思わずムカついてたのも吹っ飛んだ。
「ぼうず、どこで遊んでたんだ?」
「んっと、あの、森ん中」
「森ん中!? へえ、たいしたもんだ。怖くないのか?」
 おじさんは驚いたように言った。
「怖いって、なんで?」
「そりゃおめえ、あそこにはオバケがいっぱいだよ。オバケ森さ」
「オバケ森!?」
「あそこに平気で入れるとは大物だなぼうず。いよっ、大将!」
 おじさんはニヤニヤ笑ってオレの背中を叩いた。痛い、痛いって!
「なーにバカ言ってんだい。翔也、あんたはまずお風呂。ご飯とスイカはその後だよ」
 おおっ、出た、ばーちゃん節! おじさんは「失礼しやした」と笑って帰って行った。
 夕ご飯を食べてるとき、オレはさっきのことがちょっと気になって、ばーちゃんに訊いてみた。
「ねえばーちゃん、オバケ森って……ほんと?」
「さあねえ。あたしゃこの目で見たわけじゃないからわからないよ。まあ、居てもおかしくないんじゃないかい」
「……マジで……?」
 頭の中によくある心霊特番の映像が浮かんできた。あのテの番組って、たいていあの森みたいな場所でロケしてるよな……。恐怖の心霊スポット、とか言ってさ……。
「まあそれはともかく、気をつけな翔也。あの森は深いし、それに……」
 ばーちゃんは焼き魚の身を器用に取りながら言った。
「あの森には神様が棲んでるのさ」
「……は、神様ぁ?」
「なんだい、オバケは信じても神様は信じないのかい。森の中にほこらがあったろ。あそこに狐の神様がまつられてるんだ。だからあの森ではけしてそそうをしちゃあいけない。神様がお怒りにならないようにね」
「ふーん、そう」
 オレは適当に聞き流した。なーんか急にばかばかしくなってきた。何がオバケに神様だよ。そんなことよりもうちょっと魚にしょうゆがほしいなー、とか思ったりしていた。
 次の日フタオと遊んでて、やっぱりちょっと昨日聞いたことが気になった。
『あそこにはオバケがいっぱいだよ。オバケ森さ』
 オバケ、ねえ。…………ちょっと不思議な感じのヤツなんだよな、フタオって……。格好はほんとに田舎の……ていうか昔の子っぽい感じ。ぼろい麦わら、色あせた赤いランニング、短パン、素足に草履。体つきは細いけどけしてひょろくない。ただ、肌がすごく白い。白い肌に少し吊り気味の切れ長の目はどこか「きぞくてき」な印象さえ受ける。この森を全然怖がってないし、手ぇ冷たかったし……???
「どうしたショーヤ? ぼーっとして」
 フタオがオレの顔をのぞき込んだ。
「あっ、いやべつにっ、なんでもない」
 まさかねぇ。なに考えてんだろオレってば。
 なーんかちょっとひっかかってたけど、遊んでるうちにそんなの忘れてしまった。
「フタオってさー、あれに服装似てるよな、あの、漫画のヤツ」
「んー……オレあんまりそーゆーの知らないんだ。外で遊んでる方が面白い」
「いまどき珍しいなー」
「そっか? オレはずっとそうしてきたぜ」
 そう、フタオはほんとに、自然を友達に育ってきたって感じなんだ。
「けどオレ、ずっと独りで遊んでたんだ。だからショーヤ、お前と遊べて嬉しい」
 フタオは無邪気100%って感じにニカッと笑って言った。急にそんなこと言うから、オレは照れくさくなって「なに言ってんだよ!」ってぶっきらぼうに言った。フタオはひひっと笑った。
「でもさ、うん、オレも……オレあんまりこうやって自然の中で遊ぶことってなかったけど、すげー楽しいよ」
 オレがそう言うと、フタオはすごく嬉しそうな顔をした。
「じゃあずっと遊ぼうぜ、ずっと!」
 オレは「うん」って言いかけた。けど……。
「でもオレ、夏休みの間しかここに居れないから……」
「あ、そっか……。そーだな、仕方ねーな」
 フタオは急にしゅんとして見えた。オレは思わず言った。
「でもさ、来年また来るよ!」
「ほんとか!?」
「うん、来年も再来年も夏休みに来るから、またここで遊ぼうぜ。」
「ほんとだなー!? 忘れねーぞオレ。絶対だな!?」
「絶対! 約束だ」
 フタオはにっと笑った。オレも同じようににっと笑った。


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